僕たちの道標
人々の歓声や賞賛が暗きに射す陽の光のように優しく温かく。──道標だった頃。
カントー地方の制覇を終えて良き友と歩む先を違えた。それは決して悪いことじゃない。ジョウト地方へと足を運んで挑戦を繰り返し純粋な志で更なる昇華を目指す。
思考が偏っても。
阻まれても拒まれても否定されても。
ようやく頂点にまで上り詰めた。ここはきっと目指してきた導きの陽に一番近い場所。
それなのにどうして。
俺の手はこんなにも冷え切ってるんだろう──
「、……」
懐かしい夢を悪夢だと例えたくなかった。
目覚めた直後の体は鉛のように重く。のそりと体を起こしても頭が働かない。窓の向こう側で静まり返った夜の町を雨が濡らしている。頭が正常に機能しないのもきっと雨のせいだなどと責任を押し付けながらもう一度布団を被り睡眠欲の解消を図る。踵を返して戻ってきてくれた睡魔に感謝を抱きながら夢の中へ。
ああ。布団が温かい。……
「レッド」
寝惚け眼を擦りながら軋む階段を下れば朝食の支度を終えた母が笑いかける。
「オーキド博士が呼んでいたわよ」