僕たちの道標
裏口の扉が閉まるのを確かに見届けたところで表玄関の扉を開ける。覗き窓から確認した通りダウジングマシンを手にした男とその後ろにも一人。レッドは怪訝そうに役を演じる。
「えっと……まだ、なにか」
男たちは何を問うでも応えるでもなく共にダウジングマシンを覗き込みながら話している。一人の男がちらりと隙を見てレッドの背後に視線を遣ったがそこから窺える限りではヤミラミとピカチュウが鉱石を転がして遊ぶだけだった。
「すみません」
聞き覚えのある声に男たちが振り向くのと同時レッドも覗き込む。
「母さん……!」
「……レッド!」
出張から戻ってきたのだ。予想していたより圧倒的に早く此方に戻ってきたのは数ヶ月ぶりに息子が帰ってくると聞いて無理を言って仕事を片してきたからなのだろう。
「何の騒ぎなの?」
「ええっと」
レッドが視線を投げかけると男二人は分が悪いといった様子で顔を見合わせて。
「失礼。何かの間違いだったようだ」
「お騒がせしました」
足早に退散する二人の背中を刺すような視線で見送っていると。
「っあだ」
隙だらけの額を突かれる始末。
「心配したんだからね」
かと思えば。親というのはどうしてこうも飴と鞭の使い分けが上手いのだろうか。まさか玄関先で声を上げて泣いたりはしなかったが暫くの間は抱き締められたまま。いつの間にか自分の方が大きくなってしまったんだなぁとぼんやり思いながら懐かしい温もりに瞼を閉ざす。
「……ただいま」