僕たちの道標



「私のような進化系列であれば最初普通フシギダネであるはずでしょう。だけど私だけは他の同じ兄弟と違ってフシギソウだった。だから、初めの内は周りの誰もに期待されていたわ」


異質は未知。

まだ見ぬ境地へ至る可能性。


「ふふ。そんなはずがないじゃない。私は初めからフシギソウだったってそれだけなのよ」

少女は笑う。

「初めから進化している上に更なる進化の兆しさえ見せない私にだんだんと気味が悪くなってきたのでしょうね。トレーナーは差別的な目で私を見るようになっていったわ」

本来向けられるべきではない好奇の目。

透けた心の声。


中途半端なものは。


「凄腕の天才トレーナーさん」

軋む。

「だから私言ったのよ。貴女が私を選んだのも半端で不完全な自分を重ね合わせたから。私の花を咲かせることが出来なかったのもつまりはそういうことなのよ、って」

毒が染み渡る。

「うふふ」

いつの間にか少女は着替えを終えていた。しつこく煩わしく耳に纏わりついて離れない雨音を箱の中の砂嵐のようだと錯覚しながら見上げる少女を見つめ返せば。


「ごちそうさま」


重ねられた耳障りなノイズは。

幻聴か。はたまた。……
 
 
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