僕たちの道標
……チャイムの音。
「はっ、はい!」
慌てて飛び起きれば雨の音。壁に掛けられた時計を確かめて昨日の自分がいつの間にか眠っていたことに気がつく。兎角今はさっきの返事で扉の前で待機しているであろう何者かを迎えるべくレッドはまだ起きたばかりの寝ぼけた体に鞭を打って帽子を被り直し玄関へと向かう。
「宅配便でーす」
業者の男性は段ボールを差し出す。
「戻ってきてたんですねえ」
「あぁ、はい」
酷く曖昧に返しながらサインをしているとその後方で傘をさして何かを探している白衣の男と目が合った。明らかにこの町の研究所の研究員ではない男を何となく不審に思っていると男も此方の視線に気付いて近付いてくる。
「ありがとうございました!」
業者の男性を見送れば入れ替わるように。
「時間いいかな?」
「はぁ」
「この辺でポケモンを見なかったかい」
「ポケモンならそこの草むらに」
「あぁっ違う違う」
男は声を潜めると改めて。
「人型のポケモンだよ」
レッドは少し考えてから口を開く。
「ワンリキーのことですかね」
「うぅーん」
男は眉を寄せた。
「いや。すまなかった。失礼するよ」