零の世界



自身の置かれている状況については大凡把握した。……問題は僕と兄さんが逃げ込んだ何処であるとも表現し難い世界。

後ろ手で静かに扉を閉めた。

まずは此処が何であるかを調べよう。


気味が悪いな。空は紫色、地面は薄い赤紫色の霧が何処までも何処までも。

宛てもなく道とも言えぬ道をゆっくりと歩く。風が無ければ音も無く、生き物が居なければ建物も……

「……?」

という話でもないらしい。

同じ場所をループさせられているのかと思いきや振り向けば黒塗りの研究施設が遠く窺えた。となれば正面に捉えたあの黒い影は異なる別の建物だろう。

立ち止まっていたところ目標を見据えて歩き出す。建物はそう遠くはなかった。


二階建て程の高さはあるだろう黒塗りの形状が四角い謎の建物を見上げる。

いつまでも眺めているつもりもないので正面に向き直る。……、果たして何処が出入り口なのだろう扉が見当たらない。

でなければ強行突破するだけの話。

拳を引いて構えを取り力を込める必要もない。伸ばした左手で正面の壁に触れて瞳に紅を灯し能力の発動を図る。
 
 
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