零の世界
響く、響く。──靴音。
「それにしても」
クレイジーは上機嫌に笑う。
「驚いたなあ。奴らに感情が芽生えるなんて」
「想定の範囲内というものだ」
振り向く。
「人間だからな」
「不測の事態じゃなくて?」
「枷になるようであれば修正するさ」
双子が話しながら向かう先には扉があった。
「あればかり構っていられないだろう」
手を掛ける。
「──少なくとも。俺たちは」
視界に広がる灰と白の中間色である景色をもう何度迎えたことだろう。大々的な実験や研究は全てこの場所で行なわれ初期と比べれば様々な傷や汚れが目立つようになってきた。生々しく刻まれたそれらは今後の活動において害となり得るものでなければ修復を見送っている。
「ふふ」
双子が上機嫌である要因はそこに。液体の満たされた巨大な円筒の中で眠るのは十年前と同じ沢山のコードに繋がれた見た目幼い子供。
仮称"Xー000"改め。
新世界創造計画用人型禁忌兵器──タブー。
「ようやく」
口角を吊り上げる。
「辿り着いた」