零の世界
新世界創造計画。実行に向けた準備は現時点で問題は見られず上々だ。
ダークシャドウに関しては基礎はあれで十分。過去の失敗を省みるならばせっかくの人の形が崩れないように細心の注意を払って管理をしていかなければならないということ。液体の中に浸けておけば今のところは問題ないようだが、いずれあれの中から出して戦闘に関する様々な調整をしていかないことにはな。
Xー000も同様に。最難関は脱したがあれに関してはダークシャドウと大きく異なって完全オリジナル個体であるためかある程度の設定は施した筈なのにテクスチャマッピングが遅い。
……長い目で見るしかないか。
「兄さん」
珈琲の香りが優しく。
「クレイジー」
「真面目なのは悪いことじゃないけど」
果たして自分がこうしてテーブルに広げた数々のデータ資料と向き合ってどのくらいの時間が経ったものか凡そ見当もつかないが、一度部屋に戻ったはずの弟がこうして気にかけて珈琲を淹れてきたということはそういうことだろう。
「まだ寝ないの?」
珈琲を一口頂いて受け皿に戻す。
「ここからは持久戦だ。計画の要となる兵器の準備が整うまで俺たちは同じことを繰り返し、調整を行なっていくことになるだろう」
それが。
一体いつの話になるのか見当もつかない。
「クレイジー」
「兄さん」
珍しく声を揃えてしまった。