零の世界



「──兄弟が出来てご満悦か?」

ぎくりとして振り返る。

「お勤めご苦労様」

クレイジーは続けて、

「僕たち今とっても気分がいいの」
「……はぁ?」

訝しげに返すや否や彼ら双子を上機嫌にさせた要因が手荒に引き摺り出された。顰めて見れば年端もいかない子供なのだから呆れた。

「挨拶をしなさい」

マスターが促す。

「おれは」

その少年はゆっくりと顔を上げて。

「ダークピカチュウ……」


ハイライトの失われた虚ろな目。

淡々とした口調。


「くく」

マスターが笑った。

「何をしたんだとでも言いたそうな顔だな」

……噤む。

「お前が気にかける程のことでもない。これはひとつの実験の成果だ」

ダークリンクには分からなかった。実際彼らが禁忌兵器の開発に勤しんでいる第五研究室には足を踏み入れたことがなかったためである。

「色々教えてやってもらえる?」
「は、はぁ?」
「気に入らなければ好きにしてもいいからさ」

そうしてクレイジーが強く押し出すものだから少年は大きく蹌踉めきながらも、前へ。

「ねっ?」

顰めて見下ろすダークリンクを少年はじいっと次の指示を待つかのように見つめている。

「……チッ」

調子が狂いやがる。……
 
 
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