零の世界
禁忌兵器による能力の発動はその背に極彩色の巨大な羽根を広げる事から始まる。ぱきぱきと音を鳴らしながら光の粒子が走り羽根を象ると弾けるように色付く。僅かに透明であるそれは周囲の干渉を決して受け付けることはない。
「……四十秒弱といったところか」
今のところ人間らしい感情も何も備え付けてはいないがこの禁忌兵器は創造神と破壊神からの指令にのみ反応を示す。即ち、第三者が悪用を試みたところで決して従うことはない。
「これでも短縮された方だとは思うけど」
ふむ、と目を細める。
「まだまだ調整が必要だな……」
そうして──マスターは蒼い目を擡げるとこの場から離れるべくゆっくりと後退りをしていた少年の身体の自由を一瞬にして奪う。
「……お前は何処にも行けないんだよ?」
クレイジーが顔を覗き込む。
「ひっ……!」
恐怖に怯えた表情の。
なんと飽き足らないことか。
「大丈夫。全部忘れちゃうんだから」
僕たちは世界を支配する。
永く。焦がれた理想のために。
そのためならば。
「……さあ」
どんなに非道だったとしても。