零の世界
こぽこぽ、と──まるでその語り掛けに応えるかのように円筒の中で泡が立ち昇る。
「……出来るの?」
全く信じられないといった様子でクレイジーは静かに目を開いて訊き返した。
「だって本当に創るのだとしたら、つまりこの世界の何処にもそんな能力を持つヤツが居ないってことで──だから、ということは」
くく、とマスターは意味深に笑みをこぼして。
「今更恐れるようなことでもないさ。俺たちはもう十分に相応の罪を犯している」
目を細めて円筒を見詰める。
「だが──そうだな。敢えて言ってみるならばこれは"新世界創造計画"に備えた禁忌兵器の開発といった話になるだろうな」
禁忌、兵器……
「そんなもの本当に、」
「──創れるさ」
不安を拭い去れないクレイジーの手を取って。マスターは微笑みかける。
「俺たちなら必ず成し遂げられる」
鼓動が響く。
「……そうだろう?」
研究所ではいつもトップだった。
互いが互いの誇りだった。
出来ないことなんてあるはずがない。
ふたり一緒なら。
「そうだね。兄さん」
今度は。今度こそふたりで。
「──頑張ろうね」
指を絡めて誓い合う。
僕たちは、もう二度と離れない。……