零の世界
……さて。
理想郷を実現させる為の計画は粗方纏まったが計画実行の際、幾度となく立ちはだかることになるだろうファイター達の対策も考えねば。
マスターはとある部屋の前に居た。扉を開けば他の部屋より奥行きのある一室が迎える。すんと香る仄かな薬品の匂いはどの部屋もそれほど変わらないがこの場所は他と比べて冷たくそれでいて空気が澄んでいるかのように窺えた。
純度が高いのは申し分ない。研究や実験に菌は天敵だ。次点で人間だろうというのはさておき歩を進めて見渡す。瞼を閉じて想像する。
正面へ手を差し向ける。ゆっくりと目を開く。
──創り出せ。
「兄さん戻ったよ」
数十分後。現れたクレイジーがマスターの背に声を掛けたが次いで飛び込んだ光景に。
「、何これ」
案の定目を丸くする。
「……クレイジー」
「兄さん……これは……?」
マスターはゆっくりと振り返る。
「……叛逆者は滅びない」
そして、語る。
「何度も立ちはだかることになるだろう──であれば幾つもの可能性を想定して備えておくに越したことはない。いつの時代も、世界も人の敵と成り得るのは人だ。ならば」
右手を払えば。足下を緑色の灯が曲解しながら奥へ向かって駆けて全貌が明らかとなる。
「彼らファイターには彼らの影を手向けよう。──そう。本物以上の──偽物を」