零の世界



どくん。どくん。

「身勝手でも横暴でも我が儘でも」

胸の内が騒ぐ。

「どうせ零なら何やったって自由なんだよ」

これは。

「兄さん」

……この感覚は。

「僕たちが創るんだ。物語を」


嗚呼。


「まずは作戦を立てて──この作戦にも名前があったらいいよね。僕たちが主将で組織を立ち上げちゃうってのも格好よくていいかも!」

無邪気に語るクレイジーだったが硬直しているマスターにはたと語るのを止めて。

「駄目だった?」
「い、いや」

眉尻を下げて不安げに覗き込む弟に気付き我に返るや否やマスターは気恥ずかしそうに視線を逸らせて右手を口元に添えながら。

「……面白い話だな、と」


そうだ。俺たちはもう無力じゃない。

あの頃とは違う。


何だって出来るんだ。この力さえあれば──!


「ふふっ」

クレイジーは肩を竦めて笑う。

「やっぱり似てるね」
「ああ。双子の兄弟だからな」
 
 
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