零の世界



一見して興味に値しない情報であるかのように窺えるが何故か引っ掛かった。だがそれも長く頭の奥で縺れることなく程なく解かれる。


左利きなら。

尚更どうして犠牲に──?


確かに自分たちはマスターハンドとクレイジーハンドなのだからそれぞれの巨大な白い手袋の姿を主張する右手と左手が残されるよう運命が結び付けられたと語ってしまえばそれもそれで説明が付く。けれど兄がその運命のまま左目も左腕も捧げたとまでは思えないのだ。

もっと他の理由──自分は元々右利きだったのだから利き腕をくれたという話にもならない。であれば何があるだろう。

常識的に考えても駄目なのかもしれない。

そう。何よりも誰よりも特別で。

他ある全ては到底理解にも及ばない特殊な──


「……あ」


そして。程なく辿り着いた答えは。

「兄さんったら」

思わず笑みがこぼれてしまうほど単純で。

「……ふふ」

早く。伝えてあげないと。
 
 
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