零の世界
長い課題という話でもないだろう。かといって早急に手を打つべき事態でも有りはしない。
「兄さん」
其れについては弟が代わりに口にした。
「これからどうするの?」
創造神と破壊神。この世界の主。
求めた世界の為に歯車を狂わせ多くの無抵抗な人間たちの命を奪い去った。
悲痛な叫び声も燃え盛る炎も鮮明に。それでも尚抵抗を試みる戦士たちを冷めた目で見下して打ち払う。数十年や数百年とは比にならない、此の時をどれだけ待ち望んでいたのか。
理解されるはずもない。
けれど。目論見は阻止された。
たった一人の無抵抗な男の手によって。
「そうだな」
目論見を阻止されたからといって簡単に諦めてやるつもりもない。幼心に想いを馳せた夢は例え世界が拒もうと決して色褪せることはない。
だが今はその時じゃないのだと思う。二人だけでは同じ結果が目に見えている。ならば答えは簡単だ。来るべき日に備え息を潜めるだけ。
ぐぅぎゅるるる。
「……は」
真剣に物事を考えている傍ら情けない腹の音を聞けば誰だってそんな声が出る。
視線を受けると弟は気まずそうに笑って。
「お腹すいちゃった……」