零の世界
はてさて――突如として始まったのは雪遊びを代表とする雪合戦。子供から大人まで御用達であるこの遊びも創造神と破壊神が真似事をするとなれば一風変わったどころの騒ぎではないのでは等と想像するだろうが心配に及ばず。
「ぶふっ」
今度の雪玉も顔面に命中。まるで仔犬のように首を振って膨れっ面が顔を出す。
「やったな!」
そうして雪玉を投げ付けられたがすかさず雪のバリケードに身を潜めて。勘違いされてはいけない。こればかりは創造の力に頼らず勝負の最中で少しずつ地道に完成させたものである。
「ずるいぞ兄さん! 隠れてばかり!」
「これも立派な戦術だろう」
言われるものだと思っていたがさらりと返して攻撃に備え雪玉を補充する。その内弟の雪玉が尽きたのか攻撃が止んだ頃口元に小さく笑みを浮かべて反撃開始と顔を出した直後。
「隙あり!」
――どしゃっ、と。
「く、クレイジー」
当然のこと背中から積雪の上に倒れる。それは反則だろうとこの胸に飛び込んできた弟をすかさず見遣ったがあれこれ口に出す前に左手が脇腹に掛けられて。
「――ひっ!?」
この反応から既に御察しの通り。
「ば、馬鹿、くれいじっ」
思わぬ擽り攻撃に肩に手を掛けて引き離そうと試みるが跨がられている上お恥ずかしいながら弟のほうが力が圧倒的に強い。
「たまには勝たせてくれたっていいだろー?」
弟はにやにやと笑いながら。
「ほらほら。さっさと負けを認めちゃえよぉ」
「っひ、あはっ……あははは……っ!」