零の世界



……食物が腐っている。

「僕が見た時は新鮮だったのに」


俺たちはリビングに来ていた。そこであればダイニングキッチンもあるからと案内されたのだが冷蔵庫の中に見つけた食物はどれもこれも腐ってしまっている。

「仕方ないだろう。それは俺たちが最初に此処に来た時の話だ」

落ち込む弟を宥めて冷蔵庫を見遣る。

「こんなことで力を使いたくはなかったが……お前の力で処理できるか?」
「やってみる」

数歩後ろに下がって待機する。弟は冷蔵庫の中の食物たちを視界に捉えると瞳に紅く光を灯して。程なく。

「――ッ!」


冷蔵庫が弾け飛んだ。


「……クレイジー」
「う、使ってなかったんだからしょうがないだろ」

狼狽える弟に溜め息を吐く。

「こりゃ特訓が必要だな」
 
 
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