零の世界
……窓も無ければ時計も無い。
確かめる術はここにはないが自分はもう長い時間眠っていたような気がする。
「クレイジー」
気になって訊ねた。
「俺はどのくらい眠っていた?」
その問いに弟は少し間を置いて答える。
「……わかんない」
そうか、と呟いた。
「でも二時間とか三時間じゃなかったのだけは確かだよ」
続けられた言葉に目を丸くした。
「それよりももっと長い……一週間じゃないよな。二週間でもない気がする」
「……本気で言っているのか?」
弟はこくりと頷いた。
「僕が寝ても覚めても兄さんだけずっと寝てたから間違いないはず……時計とか無いから体感でって話になるけど」
それを確かめる術はない。
「……って。お前ずっと寝てたのか?」
俺は眉を寄せる。
「食事はどうしたんだ」
「え……」
それを聞かれてようやく弟も思い出したらしく。
「そういえば何も食べてない……だってお腹空かなくて……」
弟はその時深くは考えなかっただろうが俺は自分たちの今ある立場状況を見て心底ぎくりとした。人として大事な食物の摂取を怠り過剰に睡眠をとっても尚何も衰えず変化の見られない身体。
「クレイジー」
俺は弟の顔を覗き込んだ。
「……何が食べたい?」