零の世界
様々な生き物が暮らすあちらの世界が表なら虚無に等しい此方は裏世界といったところか。デバックルームとは例えたがルームと呼ぶには広さが桁違い……と。それはまあいいとして。
とにかく此方の世界が表世界の何もかもを管理する通常生き物が立ち入れない特殊な場所であることは分かった。問題があるとすればその正体を創造神マスターハンドである兄に知らせるのか否か。
先程得た妙な感覚を思い出して顔を顰め頭を抱える。
僕も兄さんも創造神、破壊神としてこの体に目覚め力を使い始めてからまだ間もない。性格やそれによる個性も幼少期とほぼ変わらないんだと思う。そしてそれは僕たちが人間に限りなく近い性質を持っているのだという何よりもの証拠。
この場所を。存在とその正体を兄が全て理解に及んだならきっとそれはこれまであった形を失って本当の意味での神様として確立してしまうということ。
僕は兄さんを愛している。
だからこそ。この裏世界の正体だけは、心の内側に仕舞っておこう。
今はその時期ではない。
きっとそれだけの話なのだから。