零の世界
次の瞬間だった。
「っ、」
突如として目の前に巨大なウィンドウが表示されたのである。ブルーライトに思わず目を瞑ったが程なく開く。早打ちで打ち込まれていく文字とひと回り小さなウィンドウが重ねるように幾つも。
「なんだよ、これ」
目を走らせて思わず呟く。
「……何なんだよ……!」
そこに表示されいたのはただの戯言などとは捨て置けない文字の羅列。
世界の仕組み。自然界や人間界に住まう生き物たちの今ある状況の何もかも。
まるで雪崩のように流れ込んでくる多大なる情報が有無を言わせず頭の中へ薬のように溶けていく。その今置かれている自身の状況にさえぞっとした。
……自分が。
自分でなくなるかのような感覚に。
くっと顔を顰めながらそれでも見入るようにして体が動いた。身を乗り出すべく自然な仕草で左手を置くとそれまで透明化していた台に触れてそこから青い光の波紋が広がる。
思わず手を引いたが試しに恐る恐る指先で触れると見えないというだけで先程と同じ青い光の波紋が打った。波紋が通うと呼応するようにその都度浮かび上がる模様に静かに息を呑んで再度触れる。
……キーボード。ここに来て入力を要求されるものだとは思わなかった。
それだって誰も望んだという話ではないのだろうがいずれにしても本来の目的であるこの世界の正体が掴めていない……僕は意を決して文字を打ち込んだ。