偽りの天使



今もまだ、鮮明に覚えている。

それは任務遂行中に、運が良くも悪くも出会した。姿形は全体を通して黒いということを除けば自分と瓜二つ。もし、暗闇の中で目にしたならばパートナーに限らずあのパルテナ様だって見間違えたことだろう。

瞳に浮かぶ、鮮血を連想させる赤の光で見下して偽物は笑った。


――なぁんだ。飛べないんだ。


「つまり今度の作戦は空からの奇襲か」
「ルーティにしては、なかなかえげつない作戦だねぇ?」

どうにか深手を負わせたが、空を飛ばれては無力だった。

「でもさ、基地があるからって攻撃を仕掛けてきたわけじゃ」
「あんたバカァ? 相手は敵の基地だよ。いつ仕掛けてくるかも分からないのに」
「そいつの言う通りだ。何もなければそれで済む話なんだから」

黒い羽根が舞い落ちるのを見上げて苦汁を飲んだ。

「それでルーティ。作戦の内容は?」
「まずは空から奇襲をかけてなるべく多くの敵を引きつける。それから」


もう二度とあんな思いはしたくない。

――だから。


「ロイ、ピット。二人には基地内の侵入兼偵察をお願いしたい」

……えっ。

「だめかな?」
「駄目じゃないです」

あっ。

「ロイは?」
「パートナーがやる気見せてんのに俺だけ駄々こねられないだろ? いいぜやってやろうじゃん引き受けたっ!」

ちょっと待って。

「じゃ、決まりだね」

えええぇえええええっ!? 
 
 
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