偽りの天使



「……ピット?」

はっと我に返ればロイだけじゃない、その場にいた全員の視線を掻き集めていた。

「どうしたんだよ。さっきからぼーっとして」
「もしかしてピット、空が怖いの?」
「そっそんなことあるもんか!」

カービィはにやにやと笑いながら、

「だよねぇ、仮にも天使のクセして空が怖いとかさー、恥ずかしいよ」


ズキッ、と胸が痛むのと同時にざわついた。

……お前はいいよ。飛べなくても人は何も問いたださない。けど、ボクは。


「カービィ」
「はいはい。あの時と違ってメタナイトもいるからねぇ、今回は控えるよ」

メタナイトがひと声呼ぶとカービィは傍を離れた。

ピットの視線が一瞬でも鋭く変わったのは誰も見逃さなかったのだろう。何せ彼の事情は皆が知っている。天使なのに、翼があるのに飛べない。触れてはならないであろう事態にカービィは面白半分で触れた。ストッパーがいないよりはいいだろうけどそれじゃ遅すぎるんだって。

俺が言ったところで火に油を注ぐようなものなんだろうなぁ。昔っから見当違いのことをやってばかりでマルスの期待にはいつも応えられないでいたから。

「……あー」

ルーティが気まずそうに声を洩らした。

「そろそろ本題に入ってもいいかな」
「なっなんか悪いなルーティ」

あはは、とルーティは案の定苦笑い。追い討ちをかけてきそうな彼のパートナー、ウルフもその隣で足を組んで煙草を吹かせている。単に興味がないのだろう。

「さっきも聞いただろうけどこれは作戦、正式な依頼じゃないんだ」

ルーティは自身の腰掛けてるソファーの後ろに立っていたフォックスを見遣る。

「説明してもらえるかな」
 
 
7/110ページ
スキ