偽りの天使
小柄な分、風の抵抗を受けにくく小回りが利く。加えて、あの羽根は大きさの割に風による影響を全く受けずに軽く羽ばたかせればそれだけで加速を助ける。
羨ましい限りだぜ、軌道力抜群の羽根持ちやがってよ!
「くっ」
振り向き様に腕を払って幾つかの中型火炎弾を作り出し、続けて翼を羽ばたかせ、風圧により放つ。ばらばらとタイミングをずらし仕掛けたが直後少年の生み出した魔法陣から馬鹿にならない量の光線弾が放たれ、瞬く間に撃ち落とされた。
ネロも幾つかは翼を使って庇ったが、耐えきれないと見ると翼を開き舞い上がり、翻して急降下。少年は口元に笑みを浮かべて右手を払う。
「だめだよ」
言うや否や右手の先に紫色の魔法陣が浮かび上がり。
「にがしてあげない」
ずず、と金色の柄が中心より現れる。
少年はそれを掴み、勢いよく引き抜いた。じゃらじゃら、と音を立てるそれは鎖。
「ウルフ! ネロが――」
助太刀したいのは山々なのだ。
「わっ」
「何処を見ている」
けれどそうはいかない。
「エンターテイメントに手出しは厳禁だ」