偽りの天使
そうして差し出された手に目を丸くした。
「握手だよ、握手」
ほら、と執拗に促す彼に思わず笑みがこぼれる。
「これからもよろしくな」
「……こちらこそ」
その時だった。
「うわっ」
基地内が大きく揺れたのだ。今までこんなことはなかった。
「ほらよ」
ロイが投げ渡したのは愛用のパルテナの神弓。
「急ごう」
「うん」
――浮遊大陸、敵軍基地外部。
「チッ」
舌打ちをこぼして急遽軌道を変える。すると幾つもの光の矢が目にも留まらぬスピードで飛んできて、それが浮遊大陸の敵軍基地に被弾した。少年は背中に極彩色の美しく、歪な形をした硝子の羽根を広げ追いかける。
「どうしたの?」
その少年の背後にまた幾つかの魔法陣が浮かび上がって。
「にげてばかりじゃ、つまらないよ?」