偽りの天使
白の天井を背景にちらちらと赤茶色の何かが映り込んで。
「……あれ」
色が戻ってくる。
「ロイ?」
恐る恐るその名を口にした。
青年は顔を上げて微笑む。
「ん。遅くなってごめんな」
生きていた。一聞すると物騒でしかない感想だがこれでも安堵しているのだ。あんな不意を突かれて、致命傷は逃れていたとしても敵が安全に生かしておいてくれる保証などないものだと踏んでいたのだが。……どうしたことか。
思いの外ピンピンしている。
「怪我はっ」
「俺なら平気」
それが信用なるか!
「ほら」
と思いきや。ロイが服を捲り上げれば怪我した箇所には包帯が。
「言葉の綾ってやつ」
ロイは衣服を元に戻す。
「何したの?」
「適当に言いくるめたんだよ。偽物とはいえ、同じだからな」
よく分からないが、彼の偽物であるダークロイは上手いこと乗せられて怪我を治療してくれた上に武器を返し解放してくれたらしい。
そんなのが敵でいいのか? いいのか。