偽りの天使



ダガーナイフが握られている。

……どうして?

いや、今はとにかく逃げないと。攻撃を仕掛けてきたということはこれ以上信用を置くわけにはいけない。そんな気がするんだ。

ピットは視線を外さないまま後退して、扉に突き当たった。今はまだ微量の恐怖に微か震わせながら後ろ手で探ってドアノブを掴む。捻り押し込んだが。

「え」

開かない?

「何をそんなに焦るのか理解できないな」

少年はゆっくりと踏み出す。

「発言に誤りが無ければ繕ってやると言ったんだ」

靴音が響く。

「ああでも難しいことは言わないでくれ。修繕は出来ない」

押しても引いても開かない。

「だからまずはその邪魔な羽根を除けてしまおうと思ってな」

なんで。

「骨も神経も通じているか? なら、しっかり抉り取ってしまわないと」

近付いてくる。

「邪魔になるからな」


開いて。


開け開けよ早く頼むから!


早く早くして早く早く早く、 
 
 
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