偽りの天使



……そう、なのかな。

今までがそうだったから考えたこともなかった。でもそうなるのか。これから先の場面、万が一にでも飛べるようになったとしてもこの羽根では広大なあの空を自由自在にというわけにはいかないだろう。それならそれでいいじゃないか。


いいはずなのに。


「翼とは天使の象徴だろう」

心臓を打つ。暗い考えが頭の中で渦を巻いている。

その最中で少年は翼を優しく撫でて囁いた。


「俺が繕ってやろうか」


え?

「――ッッ!」

舞い上がる羽根と鮮血。派手に斬られたが、今は。

それよりも。

「やっぱりいい反応をするな」

少年は笑った。

「これなら少しは楽しめそうだ」
 
 
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