霧雨の視界
おかしい。こんな様子の彼は初めて見る。
けれど何かに怯えているようだ。目には見えない、そして耳には聞こえない……
「……もしかして」
珍しくリンクとドンキーの声が合わさった。
ぱっと顔を見合わせて、それから揃って早足でリオンに接近。怯えた様子の彼は瞳を暗くぼんやりと影を差してぐらぐらと揺らし、直前まで振り向かないでいて。
「リオン」
「何も聞いていない」
「り、」
「見えてなど」
いない、と今にも消え入りそうな声で両耳を閉じて塞ぎ込む。
制御品の有無。それだけでこんなにも差が出るのか。あの時は実の弟に散々な言われっぷりだったもので哀れみを感じたが、この事態を意味していたとは。
だとすればこのままではいけない。誰もリオンに注目している。
「ドンキー」
リンクは決断を下した。
「……、」
堪忍したってな。
「っ、……ぅ」
嫌な夢を見ていた気がする。
ユウはゆっくりと瞼を開くと額の上に手の甲を乗せ、天井を仰いではゆっくりと息を吐いた。部屋の中は真っ暗だ。此方が布団の中で眠っているのを確認した誰かが消していったのだろう。頭がぼんやりする。疲れが抜け切っていないようだ。