演劇上等!〜白雪姫編〜
ハル率いる小人役の生徒たちは手拍子しながら観客席を抜け出て通路で合流すると、横一列に並んで端から順にくるくると回ったりハイタッチをしたり可愛らしい振り付けを披露した後小階段を登った。扉を潜り抜けた後ベッドの上で眠るリムの姿を見つけて音楽は途切れる。
「くまさん?」
「うさぎさん?」
口々に言って覗き込んだが飛び退きながら。
「……お姫さまだ!」
その声と物音に驚いたようにしてリムは慌てふためきながら飛び起きる。
「あ……あなた達は?」
「不法侵入ですよね」
正論。
「そ、それはそう……なんだけどっ」
「住居不法侵入罪で起訴します」
「台本に従いなさいったら!」
最後リムが小声で訴えかけるとハルは表情こそ変わらなかったものの引き下がった様子だった。だがまあ確かに間違った意見ではなく例えお姫様であろうと不法侵入は不法侵入である。
「前科があると貰い手がいなくなるから?」
「一人だけ達観した小人がいるのは何なのよ」
それもそれでまた正論である。
「ええっと」
リムは咳払いをして気を取り直したように。
「勝手にベッドを使ってしまってごめんなさい」
ベッドの縁に座り直しながら。
「実は……」
そこまで言って、舞台は暗転する。
『──事情を聞いた小人たちは白雪姫を可哀想に思ってお家に居候させてあげることにしました』
高らかに響き渡る笑い声。
『けれど、魔法の鏡によって白雪姫がまだ生きていることを知ったお妃様が放っておくはずもなく──白雪姫に毒林檎を食べさせるべく林檎売りのお婆さんに化けて現れるのでした……』