演劇上等!〜白雪姫編〜
リムは不意に小さく欠伸を漏らした。無論、怠惰ではないもちろん演技である。舞台上にはいつの間にか少し腰を曲げなくては通れないであろう小さな扉とその先にベッドがぽつんとセットされておりリムはその場所を目指して舞台脇の小階段を上がると扉を潜って欠伸──そして。
「少しだけ……」
ごろんとベッドの上に寝転んで瞼を閉ざせば。
『疲れ果てた白雪姫は迷い込んだ森の奥で見つけた小さな家に忍び込むと、そのまま意識を手放すようにして眠ってしまいました』
舞台は暗転──かと思えば軽快で可愛らしい音楽が鳴り始めた後スポットライトがぽつぽつと観客席に落ちて講堂内は騒めく。
「なになに?」
「あっ」
『白雪姫が眠っている間に小さな家の主人たちは帰ってきてしまいます──けれどその主人たちの正体は小さくて可愛らしい妖精たちでした』
「おひさまぽかぽか朝の匂いがするよ」
「今日もぽやぽや適当に難しく考えずに」
手拍子をしながら歌うのは。
「ハルくんが七人の小人役だったんですね!」
講堂脇のトレーナーは手を合わせてにこにこと嬉しそうに言った。そう──妖精基七人の小人役は生徒会書記でもあるハルを筆頭とした比較的小柄な生徒たちだったのだ。前述の通り小人役は全員身長が低く、それでいて童顔の生徒が選出されているもので役に適している。
「行こう行こう野を越え谷を越え」
「僕たちなら何処までも」
「ハイ、ホッホー!」
小人役の女子生徒が両手を広げると観客の生徒や父兄たちも「ハイッホー!」と声を上げた。
「ハイ、ホッホッホー!」
「ハイッホホー!」
「これはなかなか癒されますね」
賑やかな一体感にリンクはにっこり。
「ガノンドロフ先生もご一緒に」
「やらん」