演劇上等!〜白雪姫編〜
舞台真上の天井からはらはらと舞い落ちるのは雪を模した白い紙吹雪。釣られるようにして手を伸ばしながらゆっくりと立ち上がりもう片方の手を胸に添えて寂しそうに目を伏せる。
「春の風は甘く切なく残酷に。生母を光の世界へ導いて──私を置いて逝ってしまった……」
美しい歌声で物語をなぞるのはリムである。
成る程確かに適任のようだ。歌って踊るというのが今度の演劇のコンセプトなら原種がプリンたる彼女の右に出る者はいないだろう。
「──鏡よ……鏡、……」
リムが舞台の向かって右側へゆっくりと舞い踊るようにして移動すると彼女を照らしていたスポットライトが今度舞台の左側へ移った。鏡を模した小道具の前で歌うのは。
「……あれ校長じゃね?」
観客席のロイがぽつりと言った。
「この世界で一番、美しいのは……?」
ということは。
鏡を模した小道具の向こう側に姿を現したのは、その双子の弟たる赤い髪の。
「それは、あなたです──王妃様」
王妃役のマスターと鏡役のクレイジー。
確かに、これらの役は双子である彼らだからこそ適任といったところではあるが……
「蒼玉のような澄んだ瞳も絹糸のような空を写した髪も誰にも適うはずがない。王妃様こそ世界で一番、それは未来永劫違えない──」
……終わるのか?
「本当……見惚れちゃうほど綺麗だよ」
「口の達者な鏡だな」
「そんなの王妃様だけに決まってるじゃん」
「当たり前だ。誰彼と囁かれては困る」
「妬いちゃうってこと?」
「毒の林檎を齧りたいならお好きなように」
終わらなそう。
「誰だよ校長と教頭にお願いしたの」
舞台の一角で飛び交うハートにロイは呆れ顔。
「白雪姫ってさぁ……白雪姫の美しさに嫉妬した王妃が殺そうとする話でしょ」
カービィは膝の上で頬杖を付きながら。
「ハッピーエンドルートじゃん。あのままやらせといた方が白雪姫も死なないんじゃない?」
「良いけど良くねえんだよ!」
「林檎が食べられないルートは辛いだろうな」
「そういうことじゃないと思うよアイク」