演劇上等!〜白雪姫編〜
演劇会、当日。
講堂には全校生徒が続々と集まり、類を見ない賑わいを見せている。事前情報により期待値が高まっているのだろうビデオカメラを持ち出す父兄もちらほら見受けられるレベルだ。
「お姉ちゃんっ!」
ルルトは目を丸くした。
「お隣座ってもいーい?」
「私は別に構わないけれど」
今回の演劇は役者が舞台から降りる場面もあるのだそうで座席も敷き詰められているわけではなくA席やB席といった具合に分けられている。
振り分けは早い話が生徒優先で舞台に近い席──それもクラス毎という縛りがあるでもなく詰めて座ってくれるならお好きなようにとのことで別のクラスの生徒と並んで演劇を楽しむことができるのだがやって来たピチカが指定したのはルルトとルフレのその間の席である。
「どうぞ」
恐らくはマークを隣に座らせるべく待っていたのだろうが開演時間も近い。視線を受けたルフレが微笑むとピチカは嬉しそうに、
「ありがとうっ!」
「お兄さんと一緒に見ないの?」
「だってにぃに絶対うるさいんだもん」
容易に想像がつく。
「……私の兄さんと似てるわね」
ピチカが不思議そうにしているといよいよ講堂の照明が落ちた。
「大変お待たせいたしました」
静謐を思わせるBGMが流れ始める。
「これより演劇部による"白雪姫"が始まります──皆様どうぞお楽しみください」
舞台袖。スポットライトに照らし出された演劇部の副部長たる女子生徒がお馴染みの台詞を告げると講堂内は静まり返った。ゆっくりと幕が開き、舞台がライトアップ。
「透き通るような白い肌は冬を写した雪のよう」
舞台の中央でドレスを纏って歌うのは。
「私の名前は、白雪姫──」