演劇上等!〜白雪姫編〜



これだけの騒ぎになっているというのに誰一人として舞台に上がってこようとしないのが現状。無論接吻が嫌なのではない──既に心に決めた相手がいるというのもそうだが最終的な話、それをするだけの勇気が足りないのだ。事態を見守るつもりで椅子に座っていたピチカもいい加減に痺れを切らしたように立ち上がる。

「もぉっ! こうなったら僕が行くっ!」
「まーまー待ちたまえよピチカ君」
「ふきゃぁっ!?」

いつの間にか隣に座っていたローナが口を挟めばピチカは大袈裟に声を上げた。

「急いては事を仕損じる」

彼女の隣には姉のシフォンの姿も。

「……ね?」

狼狽えるピチカのスカートの裾を摘んで引いて椅子に座らせたローナはふふんと足を組む。

「さっきからなんで余裕そうなの……?」
「そりゃあ──もふごぉっ!?」

後ろの席のレッドが口を塞いだ。

「今回は頑張ってくれるみたいだからね」

疑問符を浮かべるピチカを相手ににっこりと。

「見守ってくれると嬉しいな」


舞台上──ハルは騒ぐ観客席を横目に小さく息を吐き出してリムを見つめた。

悠長にも程がある。時間はもう残されていないというのに見殺しにしたいのだろうか。実際問題、接吻するだけで話が済むというのなら自分でも構わないわけだけどあの校長のことだそれだけで話が済むものとも思えない……ともなれば役としてではない生徒会の書記としても何か最適解を、等とハルが思考を巡らせていたその時だった。
 
 
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