演劇上等!〜白雪姫編〜
……えっ?
「ぼ、僕はマークじゃない」
まるで行く手を阻むようにして現れた黒のベネチアンマスクを付けた騎士風の男子生徒基マークはこほんと咳払いをして改める。
「……マークスだ!」
なんか言い出したー!?
「マークス兄さん!?」
「いやどう見たってマークでしょ」
反射的に声を揃えて立ち上がるカムイとカンナにパックマンが呆れたように突っ込む。
「お前らって兄弟いたんだ?」
「兄弟じゃなくて"きょうだい"だよ」
「大して違わなくない?」
「違いますっ!」
そんなことはどうだっていいのだ。
「え、ええっと」
「お下がりください」
困惑するシュルクの前に小道具の剣を抜き取りながら進み出たのはベレスである。続けざまベレトまでその横に並んで剣を構えるとマークもそれに従って小道具の剣を鞘から抜き取ってそれらしく振るい差し向ける。
「簡単には通さないよ」
マークは気迫の込もった声で。
「──君に白雪姫の唇は奪わせない!」
そういうことか。
物語のクライマックスは白雪姫と王子の接吻である。マークはシュルクがこの舞台における王子役に抜擢されたということで最後の展開を阻止するべく謎の人物を装って現れたのだろう。
『た……大変なことになりました』
すると何やら副部長の生徒は焦ったように。
『白雪姫が食べた毒林檎には"三十分以内に接吻を受けなければ永遠に眠りにつくことになる"という呪いがかけられていたみたいです。このまま王子様が白雪姫の元へ辿り着けなければ白雪姫は本当に死んでしまいます……!』
講堂内がざわめく。
『突如として現れた謎の黒い騎士によって行手を阻まれてしまった王子様……白雪姫の運命は一体どうなってしまうのでしょうか──!?』