演劇上等!〜白雪姫編〜
幕が下りてから暫く舞台側で何やら騒ぐ声や音が目立った。何があったのだろうかとかあちらこちらで不安げな声が囁き合う中でルフレは顎に手を添えながら考え込む。
……物語はいよいよ終盤だわ。
兄さんったら何処に行ったのかしら……
『帰ってきた小人たちは、眠るように死んでいる白雪姫を見つけて嘆き悲しみました』
幕がゆっくりと上がると中央には硝子の棺──その中には仰向けの姿で静かに眠るリムの姿があった。周囲には花を添えて祈りを捧げるハル率いる小人役の生徒たち……
『その時でした』
舞台が薄暗くなったかと思うとスポットライトを当てられたのは観客席後方の出入り口の扉。
『一人の王子様が現れたのです』
バァンッ!
蹴破る勢いで開け放たれてそこから現れたのはドミノマスクを付けた家来役と思しきベレスとベレト。極め付けに緊張した面持ちで進み出たのは黄金色の髪に碧色の瞳とまさしく王子役に相応しい青色の衣装を身に纏った──
「シュルクさん!」
ホムラが目を輝かせながら手を合わせた。
「随分と様になっているな」
マックは感心したように腕を組む。
「同じ金髪ならパックマンでもよかったじゃん」
「お前は身長が足りないだろう」
「会長にだけは言われたくなーい」
「特別欲してもいないもので競う気はないさ」
高身長に加えて王子に相応しいパーツを揃えているともなれば役に抜擢されないはずもない。斯くして王子役として登場したシュルクは流れ始めた音楽に合わせて歌い始める。
「嗚呼、麗しの花嫁は何処に居るのだろう?」
髪を払ったり胸に手を置いたりと普段の彼からは想像も付かないような仕草を交えながら。
「僕の心を射止める運命の女性──海も山も河も空も探してきたけれど見つからない……」
ベレスとベレトを連れて舞台を目指していたが。
「真実の愛は一体何処に」
立ち塞がる影を見つけて思わず立ち止まる。
「……マーク?」