演劇上等!〜白雪姫編〜
程なくして舞台が明るくなったと思うと舞台袖から黒いローブを羽織った生徒が現れた。話の流れから察するに老婆に扮した女王なのだが背丈からしてマスターではないような……あれは誰だろうと観客席でひそひそと話す声がそれとなく目立つ中その生徒は舞台の中央付近にセットされていた小さな扉に近付いてノックをする。
「はぁい」
扉の向こう側、留守番していたのかベッドの上で鼻唄を歌いながら一人で編み物をしていたリムはベッドから降りると扉に駆け寄って、
「あら。どうしたの?」
扉を開いて小首を傾げるリムに生徒は咳払い。
「ヒッヒッヒ……お嬢さん。お腹をすかせてないかのぅ……、ひ、へっ」
リムは疑問符。
「ぶええっくし!」
鼻先まで深く被っていたフードが。
くしゃみの反動で。
「あの馬鹿……」
観客席でぼやくモウカが見つめる先。
「お、おばあさん……大丈、」
リムはギョッとする。
「ちょ」
慌てた様子で。
「どうして校長先生じゃないのよ……!?」
大きな犬の耳がぴこんと跳ねる。
そこにいたのはまさかのシラヌイだったのだ。
「そんなの儂が知りたいわ」
シラヌイは鼻を袖口で拭うと。
「気を取り直して──さっさと儂が作った特製の林檎を食べるのじゃ! 白雪姫!」