悪い子のススメ
良くないと分かっているようなことを自ら進んでやるのはどうにも人目が気になるというもの──とはいえ同じようにして横に広がって歩いている三人以上のグループというのは案外少なくはないわけで。ともなれば当然のこと。
「、っと」
一番端の方を歩いていたマークは既の所で正面衝突を回避したつもりだったがそれでも掠めてしまったのだろう。それも他校と思しき柄の悪そうな大柄男子と来たものだ。
「……ああ?」
不機嫌そうな声と共に即座に振り返っては両脇に取り巻きを連れてズボンのポケットに手を突っ込みながら詰め寄り、鋭く睨みを利かせるのだからマークも思わず一歩引き下がってしまう。
「テメェ何処の学校だコラ」
「……僕たちは」
「喧嘩はいけません!」
強気に言ってマークと並んだのはルキナである。
「お。美人さんじゃねーか」
「ちょっとツラ貸せや」
ルキナの姿を見るや否や取り巻き二人がにやにやと笑いながら彼女の肩を組んだり腕を引くのでマークも咄嗟に「やめろ!」と声を荒げた。大柄男子は舌打ちをしてマークの胸ぐらを掴んで引き寄せながら拳を引く──学園の外ともなれば特殊能力の使用は認められるだろうか、などとマークが冷静に見据えていたその時だった。
「あ?」
いつの間にか大柄男子の背後に回り込みその腕を掴んだのはロックマンである。
「他校の生徒とはいえ感心しないな」
「やんのかテメェ」
大柄男子はマークを荒く突き放すとロックマンに標的を変更したようで。
「ははっ。まさか。こうも人目につくのに学園の評価を下げるような真似はしたくないからな」
ロックマンは笑みを絶やさないまま。
「ただ……そうだな。少し道を外れた──例えばそこのビル陰の方で穏便に事を済ませられればと思うのだが、如何だろう?」