悪い子のススメ
暫しの間を置いて。
「心配してくれてありがとうございます」
先程までとは打って変わって落ち着いたトーンにマークもそろそろと視線を戻す。
「でも。見た目だけで良し悪しを判断していたら彼らの気持ちに寄り添えない」
ハッと目を開く。
「それじゃ何も変わらないと思うんです」
それに。ルキナは微笑みかける。
「何かあった時は守ってくれるでしょう?」
「ルキナ……」
彼女の言う通りだ。
自分としたことが目に見えるものばかりで一番大切なことを見落としてしまっていた。素行の悪い生徒たちを真似て普段しない装いや行いをすることで彼らの気持ちに寄り添い、より良い学園作りへと繋げようというのが今回の目的なのに。
「……分かったよ」
一国の王女様には敵わないな。
「後」
まだ何かあるのかとマークが見つめていると。
「スパッツを履いているので大丈夫です!」
「わあああっ見せなくていい!」
──レイアーゼ繁華街。この場所は学園に通っている多くの生徒たちの通学路であると同時に最も立ち寄る機会の多い場所でもある。
流石に下校途中に店に立ち寄ってはいけないルールまでは設けられていないが学園の制服を着ているからには節度を守って行動するようにと先生が口を酸っぱくして注意を促しているのが現状。
「さぁ! いよいよですね!」
それにしてもこの王女様ノリノリである。
「どうして横並びなんだ……」
「素行の悪い生徒は横に広がって歩くからな」
「海外映画のポスターみたい」