悪い子のススメ



──生徒会室。

「そんな事を言われたんですね」

放課後のこの時間はお馴染み定例会議。会議とは一概にいってもそう堅苦しいものでもなく事実議題がなければ何となく気になったものを挙げて軽く話し合うだけの比較的緩いものとなっている。

「気にしなくてもいいと思うけど」

校長室でマスターに言われたことを話してみればこの反応である。分かってはいたがこの生徒会に属している時点で生徒たちからの恨み辛みのこめられた野次など慣れっこというものだ。取り分けて批判ばかりというわけでもないしわざわざ取り上げて気にするほどのことでも──

「ロック。この間話していた資料だけど」

副会長のマークが紙の束を差し出した。

「ありがとう」

会計のルキナは何やら黙っている。

「会長。南門のメンテナンスだけど業者が」
「悪いことをしましょう」


え?


「……どうしたの」

話を遮られた書記のハルは怪訝そうに。

「私も校長先生と同じ意見です」

ルキナは目元に影を落としながら語り始める。

「生徒会として至極真っ当に学園の為に働きかけるのはもちろん素晴らしい事だと思います。──ですが! 青春真っ只中である生徒たちの気持ちに寄り添えてこそ私たち生徒会は更なる高みを目指せるものだと思うんです!」

何か熱くなっている。

「る、ルキナ?」
「殴り合いの喧嘩をしろだとか物を壊せと言うのではありません──悪いことにも色々あります」

椅子を返す勢いで立ち上がり。

胸に手を置きながら。

「──私に任せてください!」

その日一番威勢の良い大きな声で。

「皆で一緒に! 悪いことをしましょう!」


そ、それは……何か、語弊を生むような……


「面白そうじゃないか」

マークは弾かれたように振り返る。

「やってみよう」

顔を引き攣らせるマークの肩を心中お察ししますとばかりにハルが叩く。

「はいっ!」

校長に上手く乗せられたような気がするのは。

僕の気のせいだっただろうか……
 
 
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