悪い子のススメ
……自動ドアが開く。
「どうにか逃げ切れたみたいだな」
そんな風に呟いたのはロックマンだった。せっかく整えたオールバックスタイルも全力疾走をしたものだからセットが崩れて半分元の髪型に戻ってしまっている。マークも流石に転んではいけないと思ったのか腰パンスタイルだったズボンを引き上げて走ったのでこれではいつもと変わらない。ハルは前髪を掻き上げてから簡単に髪を整えると小さく息を吐いて。
「……すっかり暗くなったね」
少し洒落た言い回しをするなら今の空の様子は夜の帳が下りたといったところだった。当然学生がうろうろする時間帯であるはずもないので生徒会である四人にとって学生服でこの時間帯まで外に居るというのはまさしく貴重な体験である。
「満足したかい?」
プリクラの写真をじっと見つめていたルキナにマークがそっと声をかけた。はい、と小さく答えた後にルキナはにっこりと笑って振り返る。
「マークさん達はどうでしたか?」
三人はそれぞれ顔を見合わせた。
「悪くなかったな」
先陣を切ったのはロックマンだった。
「悪い子とは一概に言ったところで様々あるものだと学ばされた。いい機会だったよ」
「僕もロックと同じ意見だな」
マークは頷く。
「いい子ぶるより楽しかったかも」
ハルが言うと三人は思わず失笑。
「帰りましょうか!」
悪い子だって悪くない。
それは。良い子を演じるよりも──ずっと。
「おはようございます」
次の日の朝。
正門で挨拶運動をする生徒会の姿があったが。
「引っ掛からなかったのか」
「……ああ」
珍しく見逃される生徒が続出。
「気味の悪いこった」
生徒会の支持率がこっそりひっそり上がったのは誰も知らない内緒の話。
end.
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