悪い子のススメ



「おいおいおい」

周囲の音や声がざわつき海割りのように道が開かれる。青年は眉を寄せて顔を上げたがその人物を見るなり目を開いて手を引っ込めた。

「負け犬がキャンキャンうるせぇなァ?」

四人が順々に振り返った先に居たのはなんとあのリドリーだったのだ。その後ろにはお馴染みセフィロスとカズヤの姿まで──これには流石のハルも視認を避けるべくしてかロックマンの影に身を潜めた。はてさてどうしたものかと視線を遣れば肝心のロックマンも口を噤み動向を窺うかのような姿勢である。マークもルキナも釣られて半開きとなってしまっていた口を閉ざす。

「ッ……制服に着せられた思い上がり共が!」

予期せぬ人物らの登場に怖気付いた様子であった青年も周囲の視線を浴びて負けじと前に出る。

「テメェらレイアーゼの生徒だろ? 国の誇る名門学園の生徒様ってワケだ。……今ここで喧嘩を売り買いしてみろ。問題起こして不利になるのは残念ながらテメェらの方だぜ?」

青年は言いながら調子付いたのかニヤリと口角を吊り上げると煽り口調で詰め寄りながら、

「先公にケツ叩かれて自慢の学校追い出されたくなけりゃそこの連中も連れてさっさと」


──次の瞬間だった。


「がはッッ!」

一片の迷いもなく──リドリーの蹴りによる一撃が喋っている途中だった青年の鳩尾に容赦なくお見舞いされたのだ。何が起こったのかも分からず上体を起こせど目を白黒とさせている青年を起こしたのは良心の働いた外野などではなく。

「言いたい事はそれで終いか?」

カズヤは青年の胸ぐらを掴んで吊るし上げながら静かな口調で問う。

「お前の後学の為に教えてやろう」

セフィロスは薄笑みを浮かべながら。

「我々が土を踏んだその瞬間からその場所はすべからく──我々の縄張りだ」
 
 
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