悪い子のススメ
「悪い子がプレイするゲームといえば」
ルキナは手のひらで指し示す。
「これしかありません!」
「偏見だよ」
ストリートファイター。
「成る程」
ずらっと横並びとなった筐体には既に学生服の生徒が何人か座っているがその誰もうちの生徒ではない様子。まあそれならいいかとばかりにロックマンも早速一番端の筐体の前の椅子に腰掛けるのだからマークは溜め息。どうにでもなれ。
「時間を忘れて暴力に明け暮れるわけだな」
「その言い回しはどうかと思うよ」
語弊が。
「できるの?」
ハルが横から画面を覗き込む。
「元より勝つことが目的ではないからな」
ロックマンはにっこり。
「少し遊んでみようじゃないか」
このゲーム──どうやら店舗内でプレイしている人とマッチングして対戦を楽しむことができるらしく日々の不満ストレスを解消するべく学校帰りの学生から仕事帰りの社会人までそれこそ幅広い層のプレイヤーがいるらしい。
お試しとばかりに小銭を入れてゲームを始めるロックマンだったが数秒と待たずに対戦相手とマッチングしたようだ。周りにいる学生は恐らく手慣れているだろうし初心者だからといって手を抜くようなイメージのゲームでもない。
「本当に大丈夫なのかい?」
「はは。心配性だな」
ロックマンは相手が誰であれ楽しむ様子。
「気楽に楽しませてもらうよ」
キャラクターを選択して画面が切り替われば。
「ただし」
カウントの最中。目を細めて笑み。
「"悪い子"の一人として」