触るるなかれ!



三時限目──歴史。

「寝ている奴は居ないだろうな」

寝られるはずがないんだよなぁ貴方の授業で。

歴史担当教師であるガノンドロフが教科書を手にしながらじろりと教室全体を目配せしたがあのアイクでさえ瞼を押し上げて上体を起こしていた。彼の授業で居眠りをしようものなら呼び出しより何より先に魔神拳が飛んでくる。撃墜された生徒の目撃情報多数。このクラスは担任として受け持っているとだけあって見逃されているのか未だに被害を受けていないのが救いである。

……PTAなどで問題にならないのだろうか。

「八十二ページを開け」

教科書のページを捲った直後。

「、……!?」

熱烈な視線を感じた気がしてレッドは反射的に背筋を伸ばした。振り向けば相手の思う壺な気がしてレッドは窓に視線を向ける。うっすらと反射された教室の中確かに此方に視線を向けていたのはなんとあの問題児リオンである。

嫌な予感しかしない。余計なことは考えないように尽くしていたつもりだったが気持ちの余裕的に正直自信がない。それでもこの場で尻尾を振りながら飛び付いてこないだけマシなのかもしれないと思いつつ先を思えばぞっとする。


気付いている可能性がある彼の目の前で。

体操着に着替えるのはあまりにも危険すぎる!


「忌々しいハイラルの歴史を語ってやろう」

話が耳に入ってこない。

早く。ローナが戻ってきますように──!
 
 
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