触るるなかれ!
いよいよ自分の番が回ってきた──とは言ってもハンカチもティッシュも机の上に出してあるので問題はない。ハルは終始無言無表情でさらさらと用紙に書き留めていく。
「鞄」
一言そう告げられてレッドは淡々と机の横のフックに下げてあった鞄を手に取ると膝の上で鞄の中を開いて見せた。教材は全て机の中に移動させてあるので当然空っぽ。抜かりなく。
「うん」
ハルは頷くと。
「最後は上着のポケットとズボンのポケット」
え?
「確認するから立って」
近頃はそんな項目があるの!?
「え、ええっと」
マズイマズイマズイマズイマズイマズイプラズマ団じゃないけどマズイ縮めてプラズマズイ!
なんて台詞が脳裏をぐるぐると。これまで保ってきた冷静な面持ちも冷や汗を浮かべて口角をひくひく。無傷で突破できると思っていたから上手い言い訳で躱すなんて考えてもみなかった。触られたら流石にバレるし最高にまずい!
「どうかしたの」
「いえ」
即座に返して立ち上がる。どうしよう心臓がタップダンスしてる。そんな心情を他所にハルはクリップボードを脇に挟んでレッドの体に触れた。まずは上着の胸ポケットや両ポケット。何も入っていないことを確認したら次はいよいよ。
「、?」
無意識に腰を引いた。
「……何」
「なにも」
「何か入ってるの」
寧ろ穿いてないんです。
「な、なにも」
固く目を瞑って無抵抗。ハルは訝しげに見つめていたが小さく息をついて手を伸ばした。