触るるなかれ!
何の成果も得られませんでした。
とぼとぼと重い足取りですま組の教室に帰還。レッドは戸を開けて溜め息。顔を上げると殆どのクラスメイトが既に席に着いている。授業が始まるにはまだ五分ほどあるのにいつの間に真面目なクラスに昇格したんだと変な感心を抱いていたが教卓の前に立つ別クラスの生徒の姿を見て察した。
「みなさーん! 席に着いてくださーい!」
呼びかけるのはエス組生徒のしずえ。
「持ち物検査を始めますよー!」
やめてください。
「女の子の持ち物はわたしが確認しますね!」
しずえに続けて、
「男子生徒の持ち物はぼくが確認するから」
淡々とした口調でハル。
「ハンカチとティッシュは机の上に置いて」
いやいやいや。こういうのは動揺するから顔に出るんだよ。何食わぬ顔でハンカチとティッシュだけ机の上に置いて鞄の中身は無抵抗で見せてしまえばまさか下着を穿いていないなんてことが指摘されるはずもない。レッドは一度深呼吸をすると冷静な面持ちで自分の席へ。
「ピーチさん!」
早速ご指摘の声。
「破廉恥な本を持ってきたらダメです!」
「保健体育に関わる教材よ!」
ボーイズラブの同人誌だろうな。
「お菓子。持ってきすぎ」
「いいじゃんどうせ帰りには無くなるんだし」
そういう問題ではないような。
「ふふ……この日を待っていたぞ……」
怪しい笑みを浮かべて自分の番が回ってくるのを心待ちにしているリオンに先が思いやられる。
「このクラスは本当に個性的だね」
絶対に褒めてないよね。ハルはクリップボードに挟んだ用紙にペンを走らせながら移動して。
「……次」