触るるなかれ!
一時限目──何とか乗り切った!
「れ、」
呼ぶ声を掻き消す勢いで慌ただしく椅子を引いて立ち上がるレッド。疑問符を浮かべるファルコを振り返ることなく教室の入り口で話していたクッパとデデデに肩をぶつけてしまいながら飛び出すその姿に誰もが僅かにも不信感を抱いたがそんなことは本人の知る由もなく。
まさかこんなことで早退はしたくないし授業をサボるなんて御法度。保健室に行けば救いがありそうなものだがそこで恥をかくだけの覚悟がまだない。地獄耳ばかりの集う学園だ、何処から情報が漏れてからかうネタにされるか分かったもんじゃない──けれどそんな自分にも宛はある。彼なら真面目に聞いてくれるはず!
──エス組教室。
「すみません!」
戸を勢いよく開いて声を上げる。
「マークは居ますか!」
「どうかした?」
事務所のマネージャーかな!?
「あ、」
「用があるなら僕が聞くよ」
シュルクと仲が悪いわけもない。けれど何故だか彼は警戒している様子。
「何か借りに来たんだよね」
はたと気付いた。もしかしてシュルク、
「その」
こういう時の高身長男子の圧って凄い。
「何でもないですっ!」
根負けして逃走。……情けない。
「、あれ……今レッド来てなかった?」
シュルクはマークを振り返る。
「教室を間違えただけみたいだよ」
「? そっか」
それで納得してもらえるレッドって一体。