触るるなかれ!



……どうしよう。

本当にどうしよう。

数学のノートは持ってきてる。教科書もプリントも今日ある授業の分は無論抜かりなく。ハンカチだってティッシュだってもちろん忘れてない。

なのに。どうして。


下着を穿き忘れているんだ!?


気付いた瞬間から違和感が凄い。いや確かに昨日はついつい読書をやめるタイミングを見失っていつもより遅い時間に就寝となってしまったわけだけどそれにしても下着を穿き忘れるとかある? 昨日の夜は確かに穿いていたはず。

となれば。朝、寝巻きから制服に着替える時に寝惚けて一緒に脱いだんだ。……そんなこと、

「……レッド」
「はぃいっ!?」

当然のこと相手は不意打ちのつもりなんてない。ぐるぐると考え事をしている間に一時限目の数学の授業が始まっていたのである。

「よい返事だ」

数学担当教師のシモンがうむと頷く。

「では」

とんと手の甲で黒板を叩いて数式を示しながら。

「この問題を解いてみなさい」
 
 
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