触るるなかれ!



キーンコーンカーンコーン。

「……ネロ」

レッドは目元に影を落としながら。

「気のせいかローナの姿が見えないけど」
「そうだな」
「……何でだろうね」


戻ってこなかった。


「な……何でだろうな……」

物の見事にフラグ回収されるものだとは。

気まずそうに目を逸らすネロの側でレッドは教材を片付けながらぐるぐると頭の中で作戦を練っていた。元々運動が得意じゃない分成績にも響くので体育の授業はなるべく出ておきたい。雨乞いをしたところで授業の場所がグラウンドじゃなくて体育館になるだけだし。となれば着替えるしかないわけだけど体操着を持って場所を移動なんて許されるより何より目を付けられる。

……最後に着替えるしかない!


「レッド殿っ」
「うわああぁあ!?」

声が出た。

「り、リオン……!」

驚かすにしても背後とか真上とか色々あるけどまさか机の下から頭を覗かせてくるなんて。思わず立ち上がったけど正直ひっくり返るかと思った。それはさておき何用かと訊ねる相手も選びたい今日この頃事情を知ってか知らずか──或いはその目で視たのか絡んできたのはこの男。

「着替えるのだな?」

机の下から這い出て立ち上がる。

「……着替えたいのだな?」

笑みを浮かべながら興奮冷めきらぬ様子で。

「ふふ……ふふふふっ……私が、……ハァッ……ゆっくりじっくり、手伝ってあげよう……!」

いやぁああぁああ!?
 
 
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