触るるなかれ!



「たのもーう!」

引き戸を勢いよく引いて堂々の入場。

「……あれ?」

ローナは首を傾げた。それというのも保健室は物の見事にもぬけの殻といったところでマリオ先生だけでなくサボりも病人もいないときた。半開きの窓からは柔らかな風が吹き抜けてきてグラウンドから聞こえる先生や生徒の声が妙に響いて──授業に関わらない教室や廊下のこの静けさはどうしてこうもワクワクするのだろう。

と。浸ってる場合でもない。ともなれば漁るしかないなと思い立ちローナは早速保健室の中をひっくり返す勢いで目的の物を探し始める。

「うーむむ」

唇を尖らせて顰めっ面。

「けほっけほっ」

咳き込む声が近付いてくるのに気付かない。

「酷い目に遭ったよ……」
「お前が調合間違えるからだろ」

ローナは頭の上に感嘆符。

「あんな風に爆発するものとは思わなくて」
「教室消し飛ばさなかっただけマシ、……ん?」

保健室の戸が開いていることに気付いて足を止めたのはマリオである。その隣を歩いていたのは──これまた見事な爆発頭と煤ばかりの髭面だがルイージ。先程の会話から察するに授業中うっかり実験に失敗してしまったのだろう。

「誰かいるのか?」

マリオは怪訝そうに入り口まで進み出る。

「……うがっ!?」

とっ散らかり放題。

「あったー!」

ぱっと頭を上げて目的の物を掲げる少女が一人。

「む?」
「……ど」

ローナが振り返るのと同時。

「ドロボーッ!」
「ほぎゃああぁあ!?」
 
 
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