触るるなかれ!




忘れ物って誰にでもあることだと思う。

あるよね。どんなに賢くても冴えていても、ついうっかり忘れちゃうこと。うんうん。

分かる分かる。……


「……!?」


俺は自分が分からなくなりそう。


「れっどぉー」
「ひゃいっ!?」

朝礼前。声を掛けてきたのはローナである。

「うおおっ朝から元気だねえ!」

声を上げるレッドに大袈裟に仰け反るローナ。

「な、な、なに?」
「いやぁ次の数学の宿題を忘れまして」
「すーぐレッドに頼るんだからっ」

ピチカは腰に手を当てて呆れた様子で膨れっ面。

「お、それは嫉妬かい?」
「そんなわけないでしょ!」
「と……とにかく」

レッドは苦笑を浮かべながら。

「今日は、他をあたってくれないかな……」

この返しは少し珍しい。いつもの彼なら殆ど二つ返事でノートを貸してくれるのだが。

「僕でよければ貸すけど」

名乗りを挙げたのは話を聞いていたルーティ。

「おおっ持つべきものは友達だねぇ!」
「おにぃったら!」
「あはは。今回だけだよ」
 
 
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