非モテ男子の非日常
……早くない?
ミカゲが恐る恐る近付くと目の前に来たところでもう一度扉を叩かれた。そこでようやく校長と教頭ならまさか校長室に入るのにノックなどしないだろうと思い至りドアノブに触れようとした手を引っこめる。ミカゲは後退り。
「……ああ」
扉はゆっくりと開かれる。
「見つけた」
赤。
「べべべ……ベレト先生……」
いやまさか探していたんですか。
教師なら授業を抜け出す生徒を追うのは当然なのかもしれないが授業中にPCゲームにありがちの鬼畜教師紛いな台詞を吐いてきたのに警戒しないはずもない。
「授業中に抜け出すとは」
愛用の天帝の剣を蛇腹状に伸ばして床を軽く打ち横に持つ。
「お仕置きが必要だな」
イヤーッ!?
見たことある! 主にボーイズラブをテーマとしたPCゲームで見たことある! 鬼畜教師のサディスティックなプレイに身も心も骨抜きにされて従順なペット堕ちする極めて濃厚なアレェ!
「せせ、拙者はストレートが故に……!」
青ざめながら後退すればデスクに腰をぶつけてミカゲは情けなく体を跳ねた。その間にも聞く耳持たずといった様子でベレトは天帝の剣を手にゆっくりと距離を詰めていく。まさか教師の前で校則上戦術の授業以外で使用を認められていない特殊能力を振るうわけにもいかないしこれはどう足掻いても詰みなのでは? ミカゲは瓶底眼鏡の奥で固く目を瞑った。